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東京地方裁判所 昭和42年(特わ)31号 判決 1967年7月19日

本店所在地

東京都千代田区内神田一丁目九番五号

株式会社 タツミ商店

(右代表者代表取締役 巽忠春)

本籍

東京都港区芝公園第二一号地一〇番

住居

同 都新宿区西落合三丁目六番一四号

会社役員

巽忠春

明治三九年二月二八日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官稲垣久一郎出席の上審理して次のとおり判決する。

主文

被告株式会社タツミ商店を罰金三五〇万円に

被告人巽忠春を罰金三五万円に

それぞれ処する。

被告人巽忠春において右罰金を完納することができないときは、金五、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

理由

被告会社は、東京都千代田区内神田一丁目九番五号に本店を置き、宝石、貴金属等の卸販売等を営業目的とする資本金二、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人巽忠春は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人巽は、被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて、売上を除外して簿外預金を蓄積し、売掛金、貸付金を計上洩れとする等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和三八年一月一日より同年一二月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が三九、二七五、八二五円あつたにもかかわらず、昭和三九年二月二九日、同都千代田区神田錦町三丁目二一番地所在の所轄神田税務署において同税務署長に対し、所得金額が一四、五三六、〇四五円であり、これに対する法人税額が五、〇七五、五一〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の正規の法人税額一四、四七四、〇三〇円と右申告税額との差額九、三九八、五二〇円を逋脱し

第二、昭和三九年一月一日より同年一二月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が二六、四〇二、〇三一円あつたのにかかわらず、昭和四一年三月一日、前記所轄税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一二、六七二、〇一〇円であり、これに対する法人税額が四、六三一、四二〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の正規の法人税額九、五一四、五一〇円と右申告税額との差額四、八八三、〇九〇円を逋脱し

たものである。(判示各事業年度の実際所得金額の算定については、別紙第一、第二の修正貸借対照表記載のとおりである。)

(証拠の標目)

一、被告人巽忠春の当公判廷における供述ならびに検察官に対する供述調書五通および国税局収税官吏に対する上申書二通

一、被告会社代表者巽忠春提出にかかる「帳外損益並びに帳外貸借対照表について」と題する書面二通および「簿外在庫高(商品、半製品、材料)について」と題する書面

一、被告会社の登記簿謄本

一、大蔵事務官池田満夫作成の被告会社の簿外貸借対照表損益計算書調査書

一、同人作成の個人関係貸借対照表収支計算書調査書

一、同人作成の預金残高および同受取利息調査書

一、同人作成の銀行預金調査書

一、大蔵事務官佐藤重雄、石田正一、池田満夫(二通)、高橋与四郎、城戸悟(二通)各作成の現金有価証券等現在高検査てん末書

一、大蔵事務官児玉円治作成の青色申告承認取消決定に関する証明書

一、大蔵事務官池田満夫作成の巽将督に対する質問てん末書

一、巽将督の検察官に対する供述調書

一、総勘定元帳六冊(昭和四二年押第六七六号の一ないし三)

一、出納帳五綴(前同押号の五)

一、賃金台帳三綴(前同押号の六)

一、全国宝石商協同組合関係書類一袋(前同押号の八)

一、示談書一枚(前同押号の九)

一、債権者集会案内状一枚(前同押号の一〇)

一、預金総額メモ一綴(前同押号の六二)

一、昭和三八年分および同三九年分の各法人税確定申告書綴(前同押号の一〇一および一〇二)

(法令の適用)

法令に照らすと、被告会社ならびに被告人巽の判示各所為は、昭和四〇年法律第三四号附則第一九条、同法による改正前の法人税法四八条一項(被告会社につきさらに同法五一条一項)に各該当するが、被告人巽には前科なく、かつこれまで宝石業界に貢献しその指導的地位についていた等の前歴があること、判示事業年度においても逐次簿外取引を減少させようと努力していたあとがうかがわれること、査察後はそつ直に非を反省し、本件後高額の関係諸税を完納した等諸般の事情を考慮して判示各罪につき罰金刑を選択することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるので同法四八条二項により、それぞれ所定の罰金額を合算した金額の範囲内において、被告会社を罰金三五〇万円、被告人巽を罰金三五万円に処するのを相当とする。なお同法一八条により被告人巽において右罰金を完納することができないときは、金五、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 小島建彦)

別紙第一

修正貸借対照表

株式会社 タツミ商店

昭和38年12月31日

No.

<省略>

別紙第二

修正貸借対照表

株式会社 タツミ商店

昭和39年12月31日

No.

<省略>

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